研究

2023.8.3

健康×メディアの可能性を日本の学生と共に研究

ヘルスコミュニケーション教材制作の共同プロジェクト
芸術学部 インタラクティブメディア学科 客員研究員
ジョアン?カルドーゾさん
(ポルトガル?※コインブラ大学在籍)

東京工芸大学とコインブラ大学の交流について

2007年に国際交流基金専門家派遣事業の一環で、アニメーション学科の陶山恵教授がポルトガルに派遣されたことを契機に、※コインブラ大学をはじめとした現地の大学機関や文化事業団体、在ポルトガル日本大使館等との交流が始まりました。
2010年10月には、日本ポルトガル修好150周年行事の一環として、東京工芸大学と在ポルトガル日本大使館との共催で、ポルトガル国内の大学4か所及び東京にて「beyond kawaii展」を開催。以降、現在に至るまで、教員有志によるコインブラ大学等での共同研究活動は、継続的かつ発展的に行われています。
※1290年に設立された、ポルトガル最古の大学。ユネスコ世界遺産にも登録されている。

ジョアンさんはどのような研究を行っているのですか

 私は、2022年7月から約1年間、芸術学部のインタラクティブメディア学科で客員研究員として、同学科の学生及び、大久保真道教授、近藤テツ准教授と共に、「ヘルスマルチバースプロジェクト(Health Multiverse Project)=健康に関するコミュニケーション教材制作とその効果に関する研究」を行ってきました。

 この研究は、私がポルトガルのコインブラ大学で医学や生物学を学び、人々の健康に関する意識や知識を高めることの必要性を感じたことがきっかけになっています。それを、大好きな日本で、インタラクティブメディアという新しいコミュニケーション手法について学びながら研究できたことに、大変感謝しています。

研究で制作した作品について、教えてください

 制作した作品は、メディアアートが2つ、ショートフィルムが3つです。それぞれ、日本の健康課題をテーマにしています。どの作品も、コンセプトや基本的なアイデアは私から提示し、ストーリーの組み立てや、撮影、編集などは学生主体で行いました。また、医学的な知識については、私から学生にアドバイスしました。

 来日してすぐ、近藤先生の研究室に所属する4年生たちと共に最初に作ったのが、アルツハイマー病をテーマにした「記憶の色」というショートフィルムです。この作品は患者から見た世界を色で表現することで、病気の進行を感じられるようになっており、オープンキャンパスで作品を公開したところ、心を動かされたと涙を浮かべながら見てくださった方もいらっしゃいました。

 またその後、大久保先生の研究室に所属する3年生の学生たちと作ったのが、うつ病をテーマにした「笑顔の音」、ストレスによる心臓発作をテーマにした「ストレスの音」、という2つのショートフィルムです。どちらも「音」をコンセプトに、学生たちのアイデアで制作しました。「笑顔の音」は就職活動に追い込まれてうつ病を発症するというストーリーに、「ストレスの音」は働き過ぎが原因で心臓発作を起こしてしまうというストーリーになっています。この2作品は時間をかけて丁寧に制作されており、私自身、そのプロセスの中で、バックグラウンドの違う学生たちとの意見交換や作業のやり取りから学んだこと、得たものが非常に多く、大変有意義な時間を過ごすことができました。

 これらの作品は、Web上で公開しつつ、私の研究にも使用しています。大学内の学生約50人、さらに一般の方々200人超にもご協力いただき、視聴後、意識や知識にどんな変化があったか、どんな感想を持ったかなどの調査を行いました。そのレポートや、今回のプロジェクトの成果は、大久保先生、近藤先生と共に、紀要論文にもまとめています。

ヘルスコミュニケーション教材制作の共同プロジェクトHP

今後の目標について

 子どもの頃から大好きだった日本。憧れの地でみなさんのやさしさに触れ、改めて日本に恋してしまいました。コインブラ大学で博士課程を修了した後には、ぜひまた日本に戻って、健康とメディアをテーマに日本で仕事をしてみたい。そんな新たな夢が、今私の中で膨らんでいます。

6月には、ポルトガルのコインブラ现在哪个app能买足彩Nuno Coelho先生を招き、モーションタイポグラフィ課題の特別授業を行いました

左:大久保 真道教授、真ん中:ジョアン?カルドーゾさん、右:コインブラ大学 Nuno Coelho先生

大久保 真道 教授より

 海外から客員研究員を招き、共同研究を行うという試みは、インタラクティブメディア学科としては初めてのことでした。
 学生たちはジョアンさんを通じて、普段のゼミではなかなか体験できない、医学的?化学的なテーマと目的に則した作品制作という経験が得られました。そして、その過程において、バックグラウンドの違うジョアンさんのものの見方や考え方に触れたことで、多くの発見もあったと思います。また、ジョアンさんによるキャリアパスの講義も行われ、将来を考え始めている学生たちにとって良い刺激になったのではないでしょうか。
 ジョアンさんと過ごした1年は、学生たちにとっても我々教員にとっても本当に貴重な機会であり、10数年来の東京工芸大学とコインブラ大学のつながりをより一層深める好機になったと実感しています。

※所属?職名等は取材時のものです。

インタラクティブメディア学科

まだまだ進化する双方向メディアを学び、次代を拓く人材を目指して。

本学科の卒業生がエンターテインメントやアート、ITなど、あらゆる産業界で活躍できるのは“双方向性を備えた”インタラクティブメディアを習得しているから。学ぶ領域は非常に広く、時代のニーズを捉えた幅広いカリキュラムを用意しています。年次が上がるごとに、自分の目標とする領域を専門研究し、次代のメディアを担う人材を育成しています。